ひまじんの日記

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「既得権益打破!」という潮流に隠れ、人知れず根を張る若干の欺瞞

一般的に、既得権益は嫌われています。なぜなら、既得権益とは、非常に自分勝手なものだからです。自分と、自分の身の回りさえよければ、他人が不利益を被ろうと構わない。そのような考えに、既得権益は支えられています。

近年、日本全体で、「既得権益打破」が重要なトピックとして扱われています。大阪では、これを唱える橋下徹さんが、公務員や文化団体の既得権益に切り込み、一定の評価を受けているようです(諸説あり)。国政でも、(既得権益以外の問題もあるにせよ)TPPや電力自由化、年金などが話題に上がっています。「既得権益を打破できれば機会の平等が得られる、経済が成長する、国が豊かになる」そういった思いを込めて、日本は既得権益打破に向かっています。

僕自身、りばたりあんとして新自由主義を支持しているため、既得権益への切り込みは賛成です。特に、これから就職する身としては、解雇規制は早急に緩和して欲しいと思っています。

とはいえ、近年のこの潮流が、すこしだけ、不自然なものに見えるのもまた事実です。というのも、真の「機会の平等」なんて、既得権益を打破し続けても存在し得ないし、そもそも僕たちはもっとずっとでかい既得権益を抱えて生きていかなくてはならないからです。

 

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僕たちは、生まれながらにして不平等です。世帯年収も、美醜も、能力も、何もかも人によって違います。しかし、規制を取っ払って、機会を均等にすれば、「自分に見合った」教育が、そして、職が、自然に手に入ります。

という幻想が、日本ではあまりに幅を利かせすぎている気がします。

僕たちは、生まれながらにしてもっともっと不平等です。実際問題として、親が受けた教育水準と現在の職は、子の教育機会と職の選択にかなり大きな影響を与えます。例えば、大卒の親は、子が当然大学へ行くものと考える場合が多いでしょうから、子にそれに見合った教育を与え、期待をかけます。そのとき、子は、何も不自然に思うことなく教育を受け、何も不自然に思うことなく大学へ行き、何も不自然に思うことなく大企業に就職し、親と同じ「社会の上位層」に君臨します(無論、例外も少なからずありますが)。

それに対して、「そうでない」親は、そもそも子の教育にそこまで興味がない場合があります。このとき、大多数の子は、自ら高い教育水準を望まなくなります(望めない、ではなく)。仮に、親が子の教育に興味があっても、正しい教育手法がわからず、非効率的な教育を繰り返すことで、そこまで良い結果を出せないことも多いかと思われます。
よく使われる話で恐縮なのですが、15歳以上の日本人のうち大卒が占める割合に関する認識と現実のギャップが、これをよく示していると思います。平成22年国勢調査より、大卒が占める割合は19.9%です。短大・高専卒を含めても34.7%です。ここで問題なのは、高卒・中卒が多数派だと、僕たちは肌感覚で理解していない、ということです(このブログの読者層は大卒(及び大卒予定者)が中心だと勝手に判断しています)。その「みんな行ってる」「私も行った」「子も当然行く」という思いが、社会階層を固定化している。そう考えられるのではないでしょうか。

僕たちは、形式的には平等な選抜過程をくぐり抜けることで、築いた地位を自らの努力と実績によるものだ、と思っています。しかし、あくまでそれは「勝って当然の出来レース」に近いものがありそうです。

 

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話を「既得権益打破」に戻します。確かに、自由主義社会の下では、既得権益打破による機会の平等の確保は非常に重要です。そのために、わかりやすいところから崩していくのは正着手と言えるでしょう。

しかしながらこの社会には、もっとずっと大きな既得権益が、人知れず根をはっています。生まれた瞬間から、至る所に、既得権益は満ちています。正直な所、完全な「機会の平等」が存在するなんて、共産主義と同じレベルの妄想だと思います。ですから僕たちは、今こそ新自由主義の理念に立ち戻るべきなんだと思います。つまり、「市場を代替する資源配分のメカニズムは、存在しない。少なくとも、社会主義や国営企業は、市場の欠陥を是正する手段にはなりえない。だからやむを得ず市場システムに依存するしかない(引用:経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか)」ということです。

僕たちが依存している資本主義や自由主義という概念は問題だらけで、ちょっと既得権益を打破したくらいで改善されるものでもない。僕たちの生活に根ざす真の既得権益には何ら影響がない。完全な機会の平等も保障されない。僕たちは、既得権益と共存せざるを得ない。それらを認識して始めて、日本は「機会の平等」に向かってやっと歩を踏み出せるのではないでしょうか。なんか、そんな気がします。

 

 

参考文献:

 

中盤の階級再生産に関する議論は、かなりこの本を参考にしています。この本は定量的な側面からのロジックも充実しているので、社会階層に関する研究に興味がある方は是非。ただ、出版が2000年なので、扱われているデータがちょっと古いです。